江戸長火鉢
第八弾 本体価格 640,000円
最も大きく、最上級の江戸長火鉢です。
タイプ |
関東火鉢 |
材質 |
欅一枚板 + 黒柿 |
サイズ |
幅 900mm x 500mm x 540mm |
灰の必要量 |
幅 540mm x 380mm x 170mm 20kg |
五徳のサイズ |
六寸 もしくは 七寸 |
特徴 |
大きさ・厚み・ケヤキの木目、特に玉杢 |
最大の特徴はそのサイズと存在感。 長火鉢の最も重要な要素です。
通常の関東火鉢は幅70cm~78cm、 奥行きは40cm前後、高さも40cm前後です。
数字的には二回り大きく感じます。 実際は三回り大きいと思える存在感です。
写真のページは全部で4ページにわたっています。
実は中々この火鉢の深い色合いがでなかったためで、1000枚撮影したのですが、
再現性に満足できる写真は主に4ページ目になります。多くの写真は
実際の色よりも明るく写っています。とはいえ、ケヤキの関東火鉢の深い色合いです。
こちらのタイプの火鉢は、江戸火鉢、もしくは江戸長火鉢と呼ばれます。
関東火鉢とも言います。一般的には関東火鉢と呼ばれることが多いようです。 |
総合評価
日本で恐らく一番大きな、そして最上級の江戸長火鉢です。
火鉢に限らず江戸時代には在庫というものがありません。特に火鉢、さらにいえば長火鉢などについては、指物師におおよその雰囲気を伝えて依頼するのみ。あとは指物師が依頼人の社会的背景や家柄などを鑑みて決めていきます。
その意味で長火鉢の大きさというのは、そのまま依頼人の人物像に直結します。
大きければ良いというものでも無いとは思いますが、こと江戸時代の話となるとやはり驚かざる得ません。
今まで何十台という長火鉢を見てきましたが、間違いなく最高レベルの江戸長火鉢で、資料館にあるべきものとすら言う事が出来ます。
まさに、目を疑う大きさ です。
間違いなく女性には持つことはできませんし、男性でも一人で持つのも非常に難しいと思われます。重さは計れないのですが、30kg~40kg未満といったところ。
灰は約20kgはいります、総量で50kgになってしまいます。
6畳間に置いても違和感はありませんが大きいです。 撮影場所が6畳間ですので、感じはつかめるかと思います。
逆に大きなお部屋にはこの大きさが良いのですが、探そうと思っても見つからない大きさの逸品です。
引き出しの状態も完璧。痛みはどこにもありません。下の008の写真に、猫板のところのヒビが見えますが、かなり古いものらしく、漆を詰めてあります。
唯一は猫板です。 猫板はありますし、良い作りをしていますが、オリジナルでは無いと思います。これも詳しくは後述いたします。
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欅(けやき)と黒柿
ケヤキ、黒柿、は火鉢でもっとも多い組み合わせです。どちらかの木だけで作られるのではなく、「本体部分がケヤキで、淵の部分と取っ手は黒柿」 という組み合わせが最も多いです。 共に耐熱温度が400度以上という高温に耐えられる木であることがその一番の理由だと思いますが、ケヤキはその木目でも珍重されています。
黒柿は柿の木です。1000本に1本、黒い墨が入ったものがあります。それが黒柿です。切ってみないと判らないため、常に手に入る木ではありません。ケヤキの木に塗られている“柿渋”は木を茶色にしていきます。また防腐剤の役目も果たします。この“柿渋”が柿から採られることを考えると、黒柿は柿の渋がたまたま木の中に存在した珍しい木材と言えます。
長火鉢の表裏とちぢれ杢
ちょうど鉄瓶にも表裏があるように、火鉢にも表面と裏面があります。表面とは
お客様が座って見る側。つまり引き出しの無い側です。引き出しのある側は
主人が座るので裏面になります。 鉄瓶も右手にもってお湯を注ぐので蛇口が
左を向いている状態が裏面、蛇口が右向きで表面です。
こちらが“オモテ面”になります。

江戸長火鉢の場合、表面に最も良い木目を持ってきます。
たとえば玉杢のある部分や、大きな年輪だったりといった部分をこの面にもってきます。しかしこちらの江戸長火鉢に関してはこれが当てはまりません。
全ての面が最高の木目。“玉杢”も“ちぢれ杢”とよばれる木目もあります。
これももちろん初めて目にする状態です。
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玉杢(たまもく)と樹齢
最高の木目とは、ちぢれ杢と玉杢の数で決まります。特に重要なのが玉杢です。
第八弾のこの長火鉢は玉杢の代表格。
もちろん過去のどの江戸長火鉢の玉杢とも比較にならない数の多さ。
玉杢の数が多いから凄いという、これは単純な理由によります。
玉杢が多ければ多いほど、長い年月を経たケヤキの木であることの証明です。
そのケヤキの木の最も根に近く、太く、固い部分にのみ玉杢はあります。樹齢400年を超えるケヤキの根元を素材として手に出来る指物師は、当時の江戸にもそう多くはありませんでした。そのケヤキを全面に使った関東火鉢です。
腕の立つ指物師が誰に依頼されてつくったのか、この最も大きな長火鉢を作ったというわけです。 火鉢は依頼されてつくるもの。依頼主の社会的立場や背景、ようは権力の度合いがその作品に反映されました。
どなたが最初にお持ちだったかまったくわかりませんが、それも自ずから判ろうというもの。よほどのものだったのでしょう。 写真ではその大きさが今一つ伝わらないのですが、通常の関東火鉢の3回り以上大きく感じます。
欅の木の樹齢が300年、400年を超えると、自重のあまりの重さにより根元が圧迫されます。すると重さに耐えかねてコブが出来てきます。このコブの部分の木目がちぢれることから、“ちぢれ杢”と呼ばれます。
一般の木材より遥かに堅いケヤキ(欅)の木の、最も堅い部分です。ここに刃を入れ、木が暴れないよう
にするのが指物師の腕の見せ所。
そして各面に玉杢と呼ばれる○“丸い輪”が見えます。
この○は欅の木がまだ小さいころに剪定されたときの跡だといいます。この玉杢
が非常に大事で珍重されるのはそういう理由からです。この点に関しては私の修行時代、鎌倉時代から代々骨董商だという師匠に、教えてもらいました。
「価値のわかるやつの間では玉杢1つ1万円なんだぞ。」と言われたこともあります。
総欅・四面玉杢の関東火鉢 の見事さは、こういった木の歴史にも根付いたものであるのかもしれません。 |
引き出しについて
この大きさ、木の厚み。 つまりは木が暴れる条件がそろっています。
にもかかわらず、引き出しが奇跡的に完璧です。
何が完璧かと申しますと、引き出しの密閉度が高いことです。 引き出しの密閉度が高いと、1つの引き出しを閉めると、他の引き出しが空気の圧力で押し出されてきます。指物師のつくる長火鉢は、作られた当初はどれも間違いなく完璧な引き出しの状態であったはずなのです。 しかし、木は常に呼吸しています。湿気を吸ったりはいたりしていますので、さすがに引き出しの密閉度はなくなってきます。
それがこの特大の関東火鉢にはまだ残っていたのです。
このページの写真で言うと、027番。 他にはPage.3の139番などがそのときの写真です。下の幅の広い2つの引き出しではなく、右の3つ縦にならんだ引き出しがそれになります。 素晴らしい密閉度を保っています。
その昔、長火鉢の引き出しは家の中で最も乾燥する場所と言われました。
炭を燃やしていますし、灰も湿気を吸いますし、引き出しは桐です。ゆえに乾燥させておきたいもの、たとえば 海苔・煙草 などを入れておきました。
引き出しの中に和紙や紙を敷いて使うこともあります。中を汚さないためや、茶器や、そばちょこを入れるさい、うつ伏せに置きますからその為です。
取っ手なども流石に太くて大きくて立派です。通常のフルサイズの長火鉢の取っ手よりも遥かに大きいです。このページの023と024の写真は、現在登場中の関西火鉢の引き出しを中に入れた様子です。
関西火鉢が多少小ぶりなので、そこは勘案する必要はありますが、物凄く大きさに差があります。
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猫板
猫板(ねこいた)は、関東火鉢にだけあります。
ちょうど上の写真。011番に写っている台の部分が猫板です。ここによく、猫がのって寝ていたことから猫板よぼれるようになりました。
関西火鉢には猫板はありません。関西火鉢はソデと呼ばれるテーブルのような板が火鉢のまわりを囲っています。
さすが合理的な関西です。 江戸は合理性ではなく、いさぎ良さを良しとしました。
そのためテーブルはありません。 猫板があるだけです。 代わりこの猫板をお盆にしたり、炉の上にのせて簡易的にお茶を置いていたりしました。 故にたまに湯飲みの丸い跡が付いています。
この猫板。ケヤキと黒柿で出来ています。良いつくりをしていますが、オリジナルではないと思われます。理由は薄いからです。 また、木の質感も違います。
ここは非常に残念な部分です。 価格の話になりますが、本来この猫板がオリジナルであった状態とくらべて、現在の価格は20万円ほど安くなっています。
この関東火鉢に合う猫板を作ることは可能です。もちろん江戸期の欅でつくることがかのうですが、売られている木材を使うわけでは在りません。使われなくなったこれほどの厚みを持った欅を見つけ次第、手作業で復元します。 この20万円という数字は、この猫板再生の場合の数字です。
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