鉄瓶は火鉢や囲炉裏との相性がとても良いです。
それすなわち、炭火の熱が鉄瓶にとても優しいということです。
もちろん現代の生活において炭火を日常としている方は多くはありません。
(でも意外と多いのですよ!)
しかしながら、もしあなたがとても素敵な鉄瓶をお持ちなら、そしてまだ炭火を体験したことがないのであれば、これを気に火鉢か囲炉裏を考えてみるのも悪くないかもしれません。
炭火は物質そのものに熱を伝えます。と同時にその物質を焼いてしまいます。でも炭は熱の伝え方が優しいので鉄瓶の表面を傷めません。
炭は「遠赤外線」と「近赤外線」を出しています。これが輻射熱により空気を伝わり、鉄瓶に熱を伝えます。 (詳しくは 「なぜ炭で焼くと食材が美味しくなるの」 に書いてございますが、かなり昔に七輪を販売していたときに書いたものですので、直接鉄瓶とは関係のない文章です)
そもそも鉄瓶は仕上げの最終工程で「金気止め」という処理を施します。この金気止めは、備長炭で鉄瓶の本体を焼くことを言います。
そうすることで、鉄瓶の中に酸化皮膜が出来ます。 鉄瓶は使い始めてから中が安定するまで時間がかかります。それまでの間、鉄瓶の中にできた酸化皮膜が鉄瓶の内側の錆を防ぎます。
鉄瓶のお湯を飲むと鉄分も取れて良いという話はよく言われることですが、それには鉄瓶のお湯を沸騰し続ける必要があります。 確かにガスコンロでお湯が沸騰しただけでも鉄分の流出はゼロでは無いですが、長くシュンシュンとお湯が沸いていたほうが鉄分も多くでます。
鉄瓶で沸かしたお湯が「まろやかで美味しい」という話はよく聞きます。これは鉄瓶の使い始めの頃から判ることですが、鉄瓶を使えば使うほどお湯は美味しくなります。
鉄瓶を使い始めの頃のお湯は、敏感で無いとその違いがわかりません。誰でもお湯のまろやかだ。と感じるには、やはり長く鉄瓶を使って、鉄瓶の中に湯あかをつける必要があります。 しかしこの湯垢が中々つかないのです。
毎日最低3時間〜4時間つかって1年はかかるでしょうか。
残念ながら鉄瓶の湯垢の現実はそんなものです。
こうなると、冬場はなるべく長くお湯を沸かし続けたいものです。こういった鉄瓶の使い方に最も適したものが火鉢や囲炉裏というわけです。
長く使えば使うほどお湯が美味しくなるのが鉄瓶です。
ちなみに鈴木盛久工房には戦争が終わってから一度も水を抜いたことがないという鉄瓶があります。4Lくらい入る大きなもので大変見事な作りですが、かれこれ60年は炭の上で沸かし続けられています。 それはそれはものすごい年季が入った道具になっています。
それはそうと、お持ちの鉄瓶も可能な限り火鉢や囲炉裏で使っていただきたいと思います。そして是非鉄瓶のお湯だけでなくその風情もお楽しみいただければと思います。