はじめに

これから鉄瓶の使い方についてご説明します。

こんにちは。火鉢の道具店の店主、三浦(ミウラノブヒト)でございます。これから鉄瓶についてご説明いたします。

私は鉄瓶どころか、モノ造りをしていません。鉄瓶の使い方を偉そうに書いておりますが、13年のあいだ鉄瓶を販売し、自らイロイロな鉄瓶を使い、時にはガスコンロで空焚き1時間(火事になりそうでした!)とか、水切りをわすれておもいっきりサビさせてしまって愕然としたりとか、そういう幾多の失敗を経験してきました。お世辞にも鉄瓶エキスパートとは言いがたいのですが、今までイロイロな職人さんから教えていただいた話や、お客様から直接うかがったことなども踏まえて、鉄瓶をこうして使うと末永く綺麗に使えるのじゃないかという方法を書いています。

鉄瓶の作り方も、盛岡と水沢でも異なりますし、山形の鉄瓶とは更に異なる部分もございます。そして鉄瓶と急須も異なります。もし新しい物をお持ちでしたら、お持ちの鉄瓶を造られた工房さんにご確認いただくのが一番よいかと思います。そういった事も含めてご理解の上、このページをご覧いただければと思います。最後に自己紹介や、鉄瓶のこぼれ話もかいてございます。では皆さまの鉄瓶が末永く活躍されますように!

鉄瓶はじっくり育てよう

せっかく買った鉄瓶。 使い続ければ続ける程、本当に素敵になります。 既にお客様の中には鉄瓶の中を真っ白にすることに成功した方もいらっしゃいます。こうなると鉄瓶は一晩水を入れても錆びないくらいタフになります。 お湯も最初のころとは見違えるほど美味しくなります。 とはいえ何事も一歩一歩。 慌てずに鉄瓶を育てていきましょう。

鉄瓶と急須の違い

鉄瓶と急須は異なります。急須はステンレスのケトルと同じ使い方でOK。メンテナンスフリーです。急須は内側にサビないような加工が施されているから。そのため鉄分はでません。
一方鉄瓶は内側に錆止め加工をしていないためお手入れが必要です。(正確にはされていますが、ここでは省きます)
鉄瓶の一番のお手入れは、「使い続ける事」。でもそれがなかなか難しいので、使用後はしっかりと水気を撮ったりします。また使い続けることで、自分たちで湯垢をつけていく必要があります。湯垢がつくとお湯が更に美味しくなり、サビなくなります。この「鉄瓶を育てる」行為が、今の道具にはない手間。楽しい手間になります。

取っ手が横に倒れるのが急須。がっちり固定されて動かないのが鉄瓶。

なお鉄瓶は取っ手がまがりません。固定されています。理由は職人さんたちに聞いてもわかりません。親方がそう造っていたからです。想像ですが、昔は囲炉裏に書けたりカマドにかけたりします。曲がると安定しないとか、カマドの熱で取っ手が熱くなって持てないなどではないかと思います。一方急須は取っ手が倒れます。

いずれにしても急須はメンテナンスフリー。鉄瓶は要お手入れ。ここからは、鉄瓶のお手入れの仕方、育て方についてご説明します。

鉄瓶の使い方

鉄瓶は毎日使ってあげることが一番のお手入れになります。 とはいうものの、ちょっとした気を付ける点はあります。 まず鉄瓶の内部は金気止めという処理をしてあります。錆止めの一種です。これは炭を燃やして1000度以上の高温で焼く仕上げ方法です。 この作業によって鉄瓶の内部には酸化皮膜という皮膜が出来ます。 これがさび止めの役割をしています。この皮膜は、使ううちに剥がれてきますので、その間に湯垢を付けたいところです。

余談ですがこの金気止めという工程は、明治時代だったか盛岡の大火災があり、その時鉄瓶工房が焼けました。焼け跡から出てきた鉄瓶を使ったら錆びないしかえって強度が増している。これは最後に焼きを入れたほうがよいのでは?という、大火事に寄って発覚した処理方法でした。

さて、湯垢とは、水の中に含まれるミネラル、主にカルシウムが固まってできる薄い膜のことです。この湯垢、ミネラル豊富なお水、井戸水とか、外国のミネラルウォーターをつかって鉄瓶でお湯をわかすとすぐに付きます。それこそ数回沸騰させただけで湯垢がついてきます。湯垢がついてくると内部が白っぽくなってきます。そうするとサビなくなります。それでもどこか一部は赤茶けて、錆びてきますが、全く気にしないで良いです。そのうち落ち着きます。

そもそもサビは体に毒ではありません。赤錆を沢山飲むとお腹がゆるくなる程度で、鉄分は人間の体にもともとあるので害毒ではありません。ご安心ください。

それでもサビは嫌なもの。使い続けるか、湯垢を付けてしまえば問題解決します。 皮膜がはがれないうちに湯あかをつけてしまうと鉄瓶の内部はだんだんと白っぽくなり、 もっと使い込むと完全に白くなり、更に進むと湯垢の厚みが増して、1mm以上の厚みになることもあります。これは井戸水で毎日沸かして数年たった状態ではありますが。そこまでいかずとも、湯垢がつくと一晩お水を入れっぱなし手にしても全くサビなくなります。

早ければ1週間、長くても数ヶ月で湯垢はついてきます。ただし浄水器のお水を使うと、1年たっても湯垢がつきません。ミネラルも取ってしまうからです。確かに時間と使用頻度、お水の性質などありますが、湯垢がつくまでは丁寧な扱いが肝心となりはします。正しく使えば、錆びがでても問題ありません。ちゃんと安定して使い続け蹴られます。それまでがんばりましょう。

鉄瓶の慣らし期間: 使い始めの、特に最初の1ヶ月の注意です。

  1. 最初に鉄瓶の中を軽くゆすぎます。
  2. お湯を六分目くらいまでいれて一度沸騰させる。
  3. 2〜3回沸かして捨てます。濁りが無くなれば回数は問いません。 内部は決して触らない。この鉄瓶の中というものは永遠に触ることはありません。恐らく鉄瓶に限ったことではありません。中国茶の急須も同じくです。(中国には“余計なことをする人”の意味で、急須の中を洗う者。と言うことわざがあります。)
  4. 外側をふく場合は乾いた布で。
  5. 使用後は中を空にして必ずフタを取って乾かします。蓋の乗っかる部分とか、蓋の縁も念のため目視で濡れていないかチェックです。
  6. 鉄瓶の余熱で中を乾燥させると楽です。 熱が足りない場合は炭火にあてて乾かします。 鉄瓶が熱い間に蓋を取り、中に息をフーフーと吹きかけるとすぐに水分は蒸発します。鉄瓶は最後の製作工程で炭をつかって焼き付けしているので炭火は空だきの心配がありません。
  7. もちろんガスでも良いですが、その場合はガスコンロの火が、直接鉄瓶の底に当たらないようにしてください。火が直接あたると2つの現象が起きます。1つ目は変色。特に問題ないですが、変色が嫌な方は気をつけ下さい。2つめはガスの火には水分が含まれていること。1回、2回は問題ありませんが、ガスコンロの火は鉄瓶の底をすぐに錆びさせます。更に使い続けると層になって剥がれてきます。
  8. 緑茶を浸した布で表面を軽くポンポンと叩くように拭くと表面処理がなされます。1ヶ月以内にすることはないでしょうが、赤茶けてきたなとか、ついつい油を飛ばしてしまって、シミみたいなのが付いてしまった時にやってみてください。
    緑茶のカテキンと、鉄が反応して、黒い色になります。本来の鉄瓶の黒の塗料は、緑茶と鉄を水に1年浸けて作ります。錆が出ている場合は止まります。
  9. 最後に、一番水がたまりやすいのは、鉄瓶の中の、注ぎ口の付け根部分。およそ5万円以上の鉄瓶は、ここに水がたまらないように丁寧につくられていますが、そうだとしてもお湯が残りやすいので気を付けて乾かしてください。

蓋を載せる部分。これを姥口と言います。

ここも布で拭いておくと安心です。

鉄瓶のてぬぐい

鉄瓶を使っている間の注意点

  1. 鉄瓶は毎日使ってきちんと後処理していても、まもなく中に赤い斑点のような錆びが出てきます。これはどんな鉄瓶でも一緒です。それでも絶対に中は触らないように。かならず使い続ければ安定しますし、そのうち湯あかがつきます。
  2. 白っぽくなればそれが湯あかです。使い始めよりもお湯が美味しくなっているはずです。 鉄瓶は使えば使うほどお湯がおいしくなります。大事に鉄瓶を育ててください。
  3. ただ鉄瓶の中が白っぽくなるには最初の1〜2週間は毎日使いたいところです。急ぐ場合は、ボルビックや、エビアンなどのヨーロッパのお水は硬水(カルシウム豊富)なので、2〜3回沸騰させるだけで湯垢がつきます。(お客様からの報告です)
    取り敢えず1ヶ月は頻繁に使わないと白っぽくはならないと思って、あわてずに根気よく使い続けましょう。
  4. ガスコンロで鉄瓶を使う場合 強火で使用すると外側の漆が焼けて変色します。変色が気になる場合は、火が直接鉄瓶に当たらないようにごく弱火にしてください。ガスの火には水分が多いからです。
  5. 鉄瓶の鉄分は、長時間お湯が沸騰している時に最も出てきます。1つの方法として、最初にケトルでお湯を沸かし、そのお湯を鉄瓶に移し替え、簡易式のIHヒーターでシュンシュンとお湯が湧き続ける。のようなスタイルも効果的です。
  6. システムキッチンのIHヒーターで鉄瓶を使う場合 鉄瓶の底が恐らく直径13cm程度ないと電源が入らないかも知れません。殆どの鉄瓶は直径13㎝未満です。どのIHヒーターであれば直径13㎝未満でも電源が入るかは未確認です。とはいえ私の周りの方たちは、市販のコンパクトなIHヒーターで鉄瓶を使っています。
  7. 鉄瓶が一番錆びる方法、行為をご説明します。
    それは 鉄瓶の中の一度沸騰したお湯が水になっていく、この水温が下がっていく過程が一番鉄瓶の中を錆びさせます。 使い終わった後かならず乾燥させます。火鉢に鉄瓶を載せている場合は、炭火がしらないうちに弱くなって、鉄瓶の中のお湯の温度が下がっていく。などです。 ガスコンロで沸かしたお湯を、そのまま火を止めて放置した。などです。こうした場合、たったの一回でけっこうな錆が発生します。熱いお湯が水になると鉄瓶の内側はかなり錆びるということをは、覚えておいてください。
  8. それでも鉄瓶を万が一錆びさせてしまった場合は赤さびでお湯が赤くなるかも知れません。その時は以下の処理を施してみます。

★鉄瓶が錆びた時の処理方法 その1

鉄瓶が錆びてしまった時の対処方法をご説明します。骨董の鉄瓶の、物凄いサビ(鉄が腐食したり)に対する対処法ではございません。使っていて、中がだいぶ錆びてしまった、赤錆が出る。などの対処方法です。

  1. 緑茶の葉を不織布に入れたものを鉄瓶の中にいれる。
  2. 水を鉄瓶の八分目までいれて煮出す。
  3. 最低でも30分沸騰させる。可能なら8分目のお湯が2分目になるまで沸騰。
  4. お湯が2分目をきるくらいになったら一度中のお湯をすてて、また水を八分目までいれる。
  5. このお湯が沸騰して、また二分目になるまで沸騰させ続ける。
  6. この1〜4の処理を3回繰り返す。
  7. 緑茶は出がらしでOK。 緑茶のタンニンと錆が反応して、タンニン鉄が生まれます。鉄瓶の着色料は、そもそも水瓶に鉄を入れて赤くするか、そこに緑茶を入れて黒くするかで作ります。鉄瓶本来の黒は、緑茶で作れます。そして大概はこれで赤さびは止まり、お湯が赤いのも止まります。

★鉄瓶が錆びた時の処理方法 その2

  1. お米のとぎ汁を鉄瓶の6〜7分目までいれて鉄瓶のフタを取り、弱火で何度か沸かします。 鉄瓶の内側にでんぷんの膜が出来て錆がお湯に出にくくなります。
  2. とぎ汁が赤く濁らなくなったらお使いいただけます。
  3. 鉄瓶を直火で空だきしてしまった時も同様の手法で対処いただけます。
  4. 結局どれをやっても鉄瓶から赤水が出てしまって、完璧に鉄瓶を錆びさせてしまった場合は修理が必要です。
  5. だいたい1ヶ月以上かかって費用も2万円程度かかります。
  6. 感覚的には5万円前後の鉄瓶か、よほど思い入れのある鉄瓶でしたら修理する価値があると思います。
  7. そのあたりは適宜ご判断ください。お金では換算出来ない価値のある鉄瓶なら、数万円で使える状態になると思います。修繕をしてくださるのはあの鈴木盛久工房の職人さんです。
  8. 余談ですが 万が一錆びた鉄瓶の赤水を飲んでも人間に害はありません。お腹をくだすことがあるくらいだそうです。 鉄瓶の錆は体に悪いことは一切無いとは鉄器職人さんに共通した意見です。錆の粉が湯飲みに入っていても、飲んでも平気だそうで、最近の人は湯飲みに入った鉄の粒をみるとお湯をすててしまう。と逆に嘆いていたくらいです。 (私もこれを聞いて初めて悟りました)。
  9. 鉄瓶は使っている途中、鉄瓶中に結構な赤い斑点の錆が出てくることでしょう。でもあわてず、驚かずに、地道に上記の使い方を守ってなが〜〜く使ってあげてください。必ずや素敵な鉄瓶へと育っていきます。
  10. 鉄瓶の中が完全に白くなればしめたもの。一晩水を入れっぱなしにしても錆びません。そのくらい鉄瓶は道具として優れているのです。
  11. ちなみに鉄瓶の中が白くなるのは鉄瓶を所有している期間でもなく、また使用回数でもありません。 トータルでいかに長時間お湯を沸騰させていたかによります。 それゆえ、ガスなどで鉄瓶のお湯を沸騰させ、すぐにお湯を抜いてしまうような使い方では10年たっても鉄瓶の内部が白くならないかも知れません。その意味で鉄瓶は本来、炭火の上でずーっと長い間シュンシュン言わせている物なのです。

 

■砂鉄の鉄瓶の使い方、もしくは注意事項

砂鉄は錆ませんが、ただひとつだけ気をつけてください。それは、空焚きをしたり、もしくは熱い状態の砂鉄鉄瓶に、冷たい水を入れないこと。です。砂鉄は金属ではありません。 だから錆ません。一方、常に熱により伸び縮みしています。熱せられた砂鉄の鉄瓶に、突然冷たいものを入れると割れてしまうことがあります。砂鉄の鉄瓶は、岩鉄(がんてつ)の鉄瓶。つまり通常の鉄瓶と違って、割れると修理ができません。※岩鉄の鉄瓶はワレても修理ができます。(およそ5万円ほど)

Things I Can Do

以下はまだメンテナンス中になりますが、古いページの方へリンクを貼っておきます。

鉄瓶の袋弦ができるまで

およそ7万円以上の鉄瓶の取っ手は、袋弦(ふくろづる)といって、中が空洞になっています。ゆえにお湯が沸騰していても素手でもつことができます。中が空洞の鉄の取っ手。袋弦(ふくろづる)を作れるのは日本でただ一人。鍛冶屋の田中さんです。その袋弦の出来るまでを御覧ください。

廃番になってしまった鉄瓶

こちらも製造されなくなってしまった鉄瓶です。リンク先ページの文書も変えていないため、ご予約可能なように思える文体も見受けられますが、終了です。おいおい修正してまいります。

自己紹介と鉄瓶こぼれ話

こんにちは。火鉢の三浦です。2004年に火鉢と茶道具、炭と鉄瓶のお店を始めました。スタートは西荻窪で、現在は八王子におります。

事業を始めた当時は、今ほど鉄瓶の人気はありませんでした。 昔から人気があったという見方もありますが、2011年の震災以後の、鉄瓶の人気沸騰は物凄く、古い職人さんもこんなの初めてだし過去にも聞いたことがない。といういほどです。3ヶ月で出来ていた鉄瓶が1年待ち、2年待ち。中には5年街の鉄瓶もあります。

当時は私どものほうでも鉄瓶の販売をがんばっておりましたが、現在はやめております。
色々事情はございますが、一番は「作っている職人さんや工房が直接販売する流れになってきたからです。 

それが本来のあり方だと思ってもいましたので、いわゆる「仕入れをして、販売する」だけの役目を終えたと感じています。ただ鉄瓶の使い方に関してはこのままページを残しつつ、もう少し拡張していけたらなとおもっています。
一切鉄瓶作りができないという意味では、皆さんと同じ一消費者なわけですので、その消費者の視点から何かを伝えていければなと思っています。

とはいえ、タフで世代を超えて使える鉄瓶ですので、ありのままにお使い頂くのが一番だとは思います。修理の場合はおたずねください。工房に直接お送りいただき修理のお見積りをいたします。他にもなにか鉄瓶に関するご希望あれば伺いますので、ご連絡お待ちしております。

稀に手に入る鉄瓶もございますので、その時はご紹介させていただきます。よろしくお願い致します。

鉄瓶をお持ちの皆様も、まだお持ちでない方も、さまざまな良きご縁に恵まれますこと祈念しております。最後までご覧いただきありがとうございました。

火鉢の道具店 ミウラノブヒト